先日、この益子焼(ましこやき)のティーポットに一目惚れして、買いました。
この益子焼のポットは、わかさま陶芸という窯元のものです。陶芸家の若林健吾さんが、「現代社会に足りないものを毎日使える和食器でおぎないたい」というコンセプトで始めました。この白い釉薬のものは、kinariシリーズといって、他にもかわいらしいお皿など色々ありました。
ぽってりとしたまんまるのフォルム、やさしい白の釉薬にほんのり透ける茶色い土肌。手にとるだけで、素朴なあたたかい感じがして、お茶を入れるのが楽しみになります。
ところで、「益子焼(ましこやき)」とはどんな焼き物なのでしょう?産地はどこなんでしょう?以前より焼き物に興味があったので、いい機会なので調べてみました。
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益子焼(ましこやき)の産地はどんな場所?
益子焼の産地は、栃木県南東部にある益子町(ましこまち)という町です。西に宇都宮、東に水戸があり、益子町はそのちょうどまん中あたりです。
江戸時代末期から陶芸が盛んで、東京に近く、流通の便も良かったため大変発展しました。
「来る者拒まず」の風潮があったため、若い陶芸家や海外の陶芸家も多く集まりました。現在は約250の窯元があり、約400人の陶芸家が定住しています。益子焼の特徴を活かしながら、モダンなデザインのものや、ポップで可愛らしいものなど現代風の器もたくさん作られています。
毎年、春と秋に開催される益子陶器市は、全国から60万人もの人が集まる一大イベントになっており、人気の作家のお店では整理券が配られるほどです。
益子焼(ましこやき)の特徴は?
分厚くぽってりとした素朴な風合い
益子焼に使われる土は、砂気が多く、ややざらっとしているのが特徴です。気泡を多く含み、粘性が少ないため、細かい細工には向きません。そのため、この土で作られる益子焼は必然的に、分厚くぽってりとしたフォルムになっていきます。原料の土に砂気が多いため、焼き上がりも土の質感が残りますが、それが手にとる人に、あたたかで素朴な印象を与えます。
深い色と、やさしい白
益子焼は、同じ益子で作られる釉薬とも相性が良いです。
渋い茶色をした柿釉(かきゆう)、籾殻を焼いた灰から作った糠白釉(ぬかじろゆう)、深みのある青色の青磁釉(せいじゆう)、焼くと透明になる並白釉(なみじろゆう)、漆黒をした本黒釉(ほんぐろゆう)が代表的なものです。
土の性質から、焼き上がりが黒っぽくなるため、黒や茶色の深みのある色の釉薬で独特の味わいが出ます。また、黒っぽい地肌に白い釉薬を重ねてやさしい風合いに仕上げる技術も発展しました。
益子焼は日常で使う器なので、模様は刷毛目や櫛目などで描かれるシンプルなものが多いです。
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益子焼(ましこやき)の歴史は?
杉山啓三郎と笠間焼
益子焼は、江戸時代末期に杉山啓三郎という陶芸家が開業したのが始まりと言われています。それまで茨城周辺で作られていた笠間焼(かさまやき)の流れを汲んでいます。
それまで関東地方の焼き物は笠間焼しかなかったため、新しい益子焼は明治末まで大変人気がありました。
苦境の時代〜関東大震災
明治末ごろから生活様式が代わり、それまで焼き物が使われていた器や台所用品が、新しい工業製品であるガラスや金属に代わっていきました。益子焼も次第に売れなくなり、一時は製造中止にまで追い込まれました。
ところが、大正12年に関東大震災が起こると、益子焼の特需が起こりました。台所用品がすべて壊れてしまったため、作っても作っても間に合わないほどの需要があったそうです。
濱田庄司による民芸運動
その翌年の大正13年、濱田庄司(はまだしょうじ)という陶芸家が益子に定住しました。京都、沖縄をはじめ、日本全土の焼き物を研究した濱田は、良い釉薬と良い土が取れ、昔ながらの陶器の製法を守っている益子を最後に選びました。
濱田庄司は「用の美」を提唱した柳宗悦(やなぎむねよし)とともに民芸運動に力を入れ、益子焼を民芸品として推奨した結果、益子焼は日本全国に知られるようになりました。
その後、昭和54年に国の伝統工芸品に指定され、今日に至ります。
濱田庄司の開業した「濱田窯」では、2代目の濱田晋作さん、3代目の濱田友緒さんが今でも器を作り続けています。
リサ・ラーソンと濱田庄司
ちなみに、スウェーデンの陶芸家、リサ・ラーソンは、1950年代に濱田庄司と出会って陶芸を学んで以来、日本文化に強い関心を持っていました。
リサ・ラーソンは「いつか益子焼の作品を作りたい」と願い、実現させています。益子焼でリサ・ラーソンのデザインのものがあるのはそのためです。
益子焼のティーポット、使ってみました。
さて、買ってきたポットで、さっそくお茶を入れてみました。
お菓子は何てことない、スーパーで売っていたパック入りの桜餅なのですが(笑)。お茶はほうじ茶を合わせました。
今まで、耐熱ガラスのポットを使っていたのですが、益子焼のポットだと、全然雰囲気が違います。ティーポットですが(急須ではない)、今日のような和菓子にもぴったりです。
益子焼のポットがあるだけで、いつもより味わい深い、やさしい時間が過ごせる気がしました。日常の景色に溶け込みながら、ふとした時間をあたためてくれるのが、益子焼の魅力なのかもしれませんね。
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