旧暦では7月のことを「文月(ふみづき)」と呼びます。
「文(ふみ)」という言葉は、文章や手紙、文字などを連想させますが、なぜ7月がそのような呼び名になったのでしょうか。
7月が「文月(ふみづき)」と呼ばれるようになった由来と、7月の風物詩について調べてみました。
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7月の別名「文月(ふみづき)」の由来と意味
「文月(ふみづき)」という呼び名の由来は、
稲穂の「穂」から来ている説と、文字の「文」から来ているという、
大きく2つの説が考えられています。
旧暦をもとに農業を営んでいた昔の人々にとって、7月は稲穂が育つ時期です。
そこで、穂がよく見えるという意味の「穂見(ほみ)」、
穂が膨らむ(含む)という意味の「含み(ふみ)」から
「穂見月(ほみづき)」、「穂含月(ほふみづき)」と呼ばれるようになりました。
そそこから、「ふみづき」という言葉に転じたと言われています。
また、七夕行事にちなんで短冊に願い事を書いたことから、
「文」の字を当てたという説もあります。
現代では、七夕の短冊に色々な願いを書きますね。
しかし、もともとは七夕の短冊には、
「文章が上手になりますように」
「習字が上達しますように」
といった、「文」にまつわる願いを書くものでした。
そのため、「文披き月(ふみひらきづき)」から転じたというのが定説になっています。
しかし一説によると、
中国の風習で7月7日に古書の虫干しをしたことから、
「文開く月」と呼ばれていたとも言われています。
諸説ありますが、文章にまつわる「文」という説が有力のようですね。
季節や気候とはあまり関係ないのが、意外でした。
7月のその他の異名
7月の別名には他にも、
・七夕月
・棚機月(たなばたつき)
・女郎花月(おみなえしづき)
・蘭月(らんげつ)
・涼月(りょうげつ)
というものがあります。
風物詩である七夕や、季節の花に関する名前が多いですね。
「文月」よりも、上の異名のほうが季節感があって風雅な印象を受けます。
ちなみに「涼月」とは、暑くなっていくにつれて風が吹くと涼しく感じることからこう呼ばれるそうです。古くは漢詩にも登場する表現です。
最近の夏は猛暑ですが、「涼月」の名にならって、風鈴の音や打ち水など、日常の中の「涼」を探してみてもいいかもしれませんね。
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7月の風物詩
山開き
昔から日本では、山には神霊が宿ると考えられ、修行をするための限られた人しか立ち入ることができませんでした。
しかし夏の一定期間のみ、一般の人々にも登山を許可するようになり、その解禁日を「山開き」と呼ぶようになりました。
7月1日の富士山の山開きでは、一般の登山者のほか、全国各地か金剛杖を持った白装束の行者が集まり、「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱えながら登り始めます。
「六根清浄」とは、あらゆる欲や迷いを断ち切って心が清らかになることを意味します。
半夏生(はんげしょう)
夏至から10〜11日経過した7月2日ごろを「半夏生(はんげしょう)」と言います。
半夏とは、生薬となる烏柄杓という植物のことで、半夏生という呼び名はこの植物が生える時期という意味です。
気候としてはちょうど梅雨明けの頃で、農家では田植えを終える大切な節目とされました。この時期を乗り越えると、農家では田の神を祭り、麦団子やお神酒を備えて農作物の無事を祈ります。
四国地方では、その年に取れた麦でうどんを作ってふるまい、農家に従事した人々をねぎらうそうです。
小暑(しょうしょ)
「小暑(しょうしょ)」は二十四節気のひとつで、夏至から数えて15日目ごろ、ちょうど七夕の7月7日ごろにあたります。
「小暑」といいますが、気候としては梅雨が明けて一気に気温が上がり、暑さが厳しくなってくるころです。
「暑中見舞い」を出すのはこのころで、7月7日の「小暑」から7月末ごろの「大暑」の時期に出すのが礼儀です。立秋(8月7日ごろ)を過ぎて送る場合は「残暑見舞い」となります。
七夕
7月7日は「七夕」です。もともとは中国の星伝説と、日本の棚機女(たなばたつめ)という、神様を迎えるための神衣を織る乙女を信仰する祭事が融合したものだと言われています。
笹竹に願い事を書いた色とりどりの短冊や飾り物をつるし、軒端に飾る七夕祭りは、7月の別名「文月」の由来にもなりました。
お中元
お中元とは、日頃お世話になっている方へ、挨拶を込めて贈り物をすることです。
中国の道教では、「三元節(さんげんせつ)」といって、1月15日を「上元(じょうげん)」、7月15日を「中元(ちゅうげん)」、10月15日を「下元(かげん)」とし、それぞれの日に神様に供物を献上して祝う習わしがありました。
その中のひとつである「中元」が、日本のお盆の習慣と重なって、先祖の供養とともに親戚やお世話になった人に贈り物をする風習が生まれました。
お中元を贈る時期は地方によって違いますが、関東では6月末から7月15日ごろ、関西では7月下旬から8月上旬に贈ることが多いです。
土用
7月20日頃から8月7日の立秋の前までを土用と呼びます。
土用とは、春夏秋冬を「木・火・土・金・水」の5つに分類して考える陰陽五行説に基づいており、土は物を変化させる作用があるため、季節の変わり目を「土用」としました。
本来は四季それぞれに土用があるのですが、今では立秋の前だけを土用と呼ぶようになりました。
土用の日には、うどん、うり、梅干し、うなぎなど、「う」のつくものを夏バテ防止に食べる習わしがあります。食べるものは地域によって違いますが、とくにうなぎは有名です。
大暑(たいしょ)
「大暑(たいしょ)」は小暑の次にくる二十四節気のひとつで、7月23日頃にあたります。
大暑という字の通り、一年でもっとも暑さが厳しいころで、気温も湿度もピークに達します。台風やスコールのような夕立に合うのもこのころです。
大暑を過ぎると、暦のうえでは「残暑」となります。
まとめ
7月の異名の由来と風物詩、いかがでしたか。
こういった由来や風物詩を知ることで、また違った楽しみが生まれるかもしれません。日に日に暑くなっていく時期ですが、季節の細やかな変化を感じながら過ごしたいですね。
以上、7月の異名の由来と風物詩をまとめました。
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